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 日仏独・三大学共同研究会 『国家と国境 日仏独の比較研究』

(2015年7月6日— 11日に神戸大学にて開催)の紹介

参加大学

-        パリ西・ナンテール・ラデファンス大学 (フランス)

-        オスナブリュック大学(ドイツ)

-        神戸大学(日本)

 

(1) 日本の法制度は、19世紀に仏独をはじめとする欧州諸国、20世紀に北米諸国それぞれの影響を受けたが、その後の発展段階においては、固有の文化・伝統に基づく独自の発展を見せている。特に、日本の多くの法学者が言うには、いわゆる「国際的」法規範が日本国内の法文化において実質的な意味を持つこと自体が、必ずしも当たり前のこととして受入れられていない。しかし他方で、日本を含めたアジア地域全体が、グローバル化する世界に向けて徐々に開放的にならざるを得なくなっており、それは当然に連想される経済の分野に留まらず、法制度をはじめとした社会分野においても当てはまる。

 アジア太平洋地域において交渉される多数の自由貿易協定は、このような動きを反映しているが、この他にも2つの重要な帰結がある。すなわち、まず日本における直接的な動きとして、移民労働力への国境の開放など、国家による国境管理に関する様々な課題(これらはもちろん、労働や法の分野に留まらず、文化摩擦、言語、教育等にも影響が及ぶ)を提起するほか、第二に、より広くグローバルな観点からは、フランスを含む欧州にとって、世界の外交的中核がもはや大西洋(特に北大西洋)ではなく太平洋に位置することにいかに対応するかが非常に重要な課題となっている。

 このような背景の中で、本プロジェクトの企画に際し、三大学の参加者間で、仏独のこれまでの経験の中に、日本及びアジアにおける議論に有用となり得る要素が含まれているとの認識が共有された。それらは50年以上続く欧州統合のプロセスが、欧州地域の発展と平和のためにもたらした利点と同時に、2008年の経済危機が示したような限界と弱点であります。 

 他方、フランスにとっては日本を含むアジア地域の動向とそれらがもたらす深い変化を、より適格に認識する必要があり。このような認識の下、本企画が催すシンポジウムにおいては、相互に比較分析を行うことにより、日欧双方での議論をより豊かなものとすることを目指している。

 また、当シンポジウムにおいては、現在進行しているグローバル化によって、グローバルな、或いは「世界共通的な」規範、すなわち国家や地域の境界を超えて適用可能な(或いは適用されるべき?)法規範が形成されつつあるのか、という疑問に対する考察も行うこととなっている。それらは、法の統治、人権保障、良質なガバナンス、等々に関する考察をも含むこととなる。

 或いは、これら「世界共通的」と思われる規範は、専ら西洋的な思考から生まれる概念にほかならなく、世界に存在する文化的、歴史的多様性を考慮し、それぞれの文化的特徴に適合させることが必要となるのか?

 

 このような問題意識の下、三つのサブテーマを設定し、それぞれを1日ずつ議論します。これに加え、京都のアンスティチュ・フランセ関西などでの仏独の公式イベントも今後予定される可能性がある。

1.「国家と国境:原理的、学際的視点から」

2.「グローバル法形成の可能性・欧州の法秩序の形成」

3.「日本・アジア地域の動向・欧州法と加盟国法の関係」

 

これらを比較的観点から分析する。法学的な分析がまずなされるが、更に学際的な側面からの分析(哲学、社会学、経済学の視点)も行う。全ての報告者が全てのセッションに参加することにより、より深い議論ができることを見込んでいるほか、より適格な経験、文化的経験の共有を下にした議論が可能となるでしょう。 また、各セッションには報告者とは別の司会者が議論の進行を担当し、短いセッションの導入を行います。各報告は質問を含め30分程度となっており、セッション毎に質問セッションが設けられています。またサブテーマ毎に、聴衆(主に神戸大学の学生、および研究者)を交えた議論(40分程度)が予定され、それまでの議論の確認となるほか、全ての報告をまとめた出版物(2016年刊行)を予定しております。

 

(2) また、このような研究交流の目的を超えて、本企画では、学生と若手の研究者の交流と対話を、国境を超えて促進することも目的としている。 これは、2013年に行われた、オランド大統領による日本への公式訪問と、その際に交わされた学術交流分野での各合意に沿った方向性を採るものである*

出発点として、アジアからの学生のうち、欧州ではなく北米に留学する者があまりにも多い(多すぎる?)ということであり、彼ら・彼女らに、フランス留学の選択肢を提供することが有用と考えられることである。アジア地域においてEU研究センターが数多く創設されている(今回のパートナー校である神戸大学がその完璧な例である)ことからも、その重要性は伺える。

このため、我がナンテール大学、そしてフランスのヴィジビリティーを高めたいという希望を抱いており、日本およびアジア地域からよりたくさんの学生を受入れることができると信じている。

逆に、しかし同様の観点から、本企画の多くの参加者がイル・ド・フランス出身の若手研究者であることが重要である。アジア研究は、フランスの大学における研究の中心に置かれるべきであり、我がナンテール大学をこの無視できない研究の潮流の中心に据えたいと考えている。

このため、日本(及びアジアの)学生のため、そしてむしろナンテール大学の学生・若手研究者のために、既にアジアとの間で存在する交流を深めたいと考えている。特に、ダブル・ディグリー、共同指導の分野を充実させたいと考える。このことを視野に、学生・若手研究者の参加を重視したワークショップを予定している。そのような研究交流を通じて、彼ら・彼女らの国際的な勉学・研究の機会を増加させることを目指すものである。

 

* 20145月に締結された『高等教育機関における履修継続のための履修、学位および単位の相互認証に関する協定』に基づく

Mis à jour le 03 juin 2015